魔轟三鉄傑のあゆみ⑩【絶級 降臨! 魔道魔人!】
2柱の神が力を振るうツィマオツィカ平原--
その片隅に、ひょっこり動く影があった。
まさに千載一遇の好機!
牢を抜け出してきた甲斐があったな!
今こそ奴らに借りを返してやろうではないか!
我ら心に虎を飼う一族の力、彼奴らに思い知らせてやるべし!
べしべし!!
ふたり、高らかに笑い合い、金で雇ったゲス傭兵たちとともに、戦場へと踏み込もうとする。
だが。
???
彼方から放たれた投剣の群れが、次々とゲスタイガーたちの足元に突き刺さり、その歩みを阻んだ。
ふたりは、剣が飛んできた方向--
前方の断崖を注視する。
???
あたしたち5人がいる限りね。
???
???
???
???
???
???
おまえたちの悪事、ここまでと知れ!
戦闘の少女が宣言した次の瞬間、5人が跳んだ。
ためらいもなく断崖から跳び下りたかと思うと、手に手に剣を抜きつれて、ゲスタイガー一味へと駆けこんでいく。
空気を読むということを知らんのか!
総勢100人にも達する傭兵連中が、雄叫びを上げて5人を迎え撃つ。
普通に考えれば、到底、勝負になる数字ではない。
だが、この5人、あいにくと“普通”の範疇から外れに外れた者たちだった。
ヒフミ
少女が無数の剣を投じた。
刃は押し寄せる傭兵たちの足元、その影に突き刺さる。
傭兵
怖くて怖くてたまらねえ~っ!
傭兵
危ねえじゃねえかーっ!
おっかさーん!
ヒフミ
ママのところへお帰んなさい。
傭兵たちはたちまち戦意を喪失し、武器を投げ捨てて遁走を始めてしまった。
ミサギ
バニー姿の少女が、高々と跳躍した。
その高さ、優に人の数倍であった。
傭兵
傭兵
ミサギ
傭兵たちの剣を軽々と飛び越え、ふわりと降り立ちながら槍剣を一閃。
敵はバタバタと倒れ伏していく。
ヤシラ
男が、するりと敵へ向かった。
たちまち傭兵たちが殺到し、剣を振るうが、男はそのすべてをたちどころに弾いてのけた。
傭兵
こちらの攻撃を全部読んでやがるのか!?
傭兵
ヤシラ
颶風のごとく剣威がうなる。
傭兵たちは抗うすべもなく、手にした得物を弾き飛ばされてしまった。
セリカ
悪党ども、我が剣を受けてみよー!
少女が物言わぬ木馬にまたがった。
すると地面から巨大なメリーゴーラウンドが出現し、少女の木馬を回収しつつ、傭兵たちへ向かっていく。
傭兵
セリカ
傭兵
傭兵たちは叫びながら吹っ飛んでいった。
こうなれば、我ら兄弟の力にて葬ってくれる!
タイガーダッシュ!
“崇高なる志”を重みに変えるフィールドのなかで、デスタイガーが高速移動を始めた。
これでなすすべもあるまい!
デスタイガーが倒れた。
なに!?
おまえなに!?
あんの!?
志あんの!?
ネイハ
凛とした少女が、滑るような足取りでゲスタイガーへと向かった。
麗剣が艶やかにひるがえり、両の虎を瞬時に叩き伏せる。
志の重みがありながら、なぜ動ける……。
ネイハ
今さらその重さに屈する道理はない。
ぱちりと剣を鞘に納める少女の後ろで、ダブルタイガーが意識を失う。
ネイハ
生きて己が罪を償うがいい。
その頃には、他の傭兵たちもあらかた倒れるなり逃げるなりしていた。
ヒフミ
ネイハ
うなずいて、ネイハははるかなる空へと視線を向ける。
禍々しい気を発する魔城--
そして、そこへ向かう一対の翼へと。
ネイハ
魔道城塞バラキーファ。
幾多の攻撃を潜り抜けたガンナースは、その屋上へ身体を滑り込ませた。
ガンナースから飛び出した三鉄傑を待っていたのは、広い屋上の真ん中で玉座に座った、壮年の男--
???
スローン
玉座の仙ロードを極めし玉座魔、スローンである。
スローン
ようやく手にしたこのバラキーファ、
貴様らに明け渡すつもりはない。
あたしたちはね、あんたらのせいでメーワクしてる女の子を助けるために来たの!
かかる非道を見過ごすわけにはゆかぬ!
その誓いを胸に戦う!
それが--
あー………え?
あ、やるの?
そういうの?
あんたみたいなろくでもないおっさんに、シャティは渡さないわよ!
スローン
愚か者め!
あの小娘など、もはや必須の存在ではない。
スローン
魔轟三鉄傑!貴様らよ!
笑うスローンの玉座から、絶大な魔力が放たれる。
邪悪な風がごうごうとうなり、空間そのものが悲鳴を上げさせた。
尋常な量ではないぞ!
スローン
スローン
スローン
つまり本気で追い込まねば本気は出せぬのだ!
スローン
その白羽の矢が立ったのが、貴様たち魔轟三鉄傑なのだ!
スローン
我が掌の上で踊っているとも知らず、まことに滑稽であったわ!
スローン
奴らはしょせん手駒に過ぎぬ。
我が野望の足がかりとなれて、さぞかし本望であろう!
スローン
実際ここでやられるとは本気で後がないゆえな!
まさに背水の陣というわけよ!
スローン
さあ、見せてやろう。
魔神の力を受けて放つ我が仙術奥義--
“強えヤツ召喚”をな!
スローン
さすれば我が天下の到来である!!
そうか!
そのために、リンゴを盗んでいたんですね!?
スローン
そうだな、1人でも強くて、あと黒っぽい奴がいい!
そういう奴はだいたい悪い奴だからなー!
スローン
1人で黒くて強いヤツ!!!
スローンの叫びにお呼応して、集う魔力が強烈な光を放った--
ウィズ
ウィズ
なんだろうね、と君は言った。
いつものように、トルリッカの魔道士ギルドに向かって道を歩いていたら、突然景色が一変した。
どうやら、どこかの城の上らしい。
玉座に腰かけた男と、統一感のない風体の3人がいる。
ウィズ
それもそうだね、と君は首をかしげ、周囲を見回した。
場の誰もが、きょとんとして君を見つめている。
妙ないたたまれなさを感じながら、君はとりあえず3人組の方を見た。
すると彼らはあわてた様子で、何やら話しかけてくる。
ミーら、違うネー、敵じゃないネー!
あいつ 悪いヤツ!!
いや、言葉通じるから、と言いながら、君は彼らが指差す玉座の男へ向き直る。
スローン
ほーら黒猫連れの魔人よ、共に世界を支配しよう!
奴らを倒してくれたら、このおいしいリンゴをあげちゃうぞー。
ウィズ
キミ、とりあえずやっつけるにゃ。
世界を支配しようとする人間を放っておくわけにはいかないね、と、
君はうなずいてカードを取り出す。
スローン
なんかいいヤツ来ちゃったぞー!?
どうも、と言いながら、君はカードに魔力を込めた。
スローン
玉座魔の力を見せてくれる!
スローンは、玉座ごとフワリと浮き上がり、そのまま高速で突進してきた。
スローン
スローン
わしは本当は、世界などではなく、玉座からの解放を望んでいたのかもしれぬな……。
スローン
頼みの綱の魔人が敵に回った今、もはやわしは無敵なのではないだろうか!?
確かに、君たちの攻撃はいっさい通じていない。
どうしたものかと君が考えあぐねていると。
地獄三十六歌仙
ご無事ですか~~~っ!!
地獄三十六歌仙
突然、ガラの悪い男たちがどやどやと屋上に上がりこんできて、君たちの前に立ちふさがった。
スローン
地獄三十六歌仙
ひとりで戦うなんて水くさいぜーっ!
地獄三十六歌仙
今こそその恩を返すときと見たぜーっ!!
スローン
地獄三十六歌仙
これだけの数がそろえば、負けるわけがないぜーっ!!
途方もなく強大だったスローンの威力が、しおしおとしぼんでいく。
3人が叫んだ。
うなずいて、君は魔法を撃ち込んだ。
どっかんどっかん撃ち込んだ。
地獄三十六歌仙
敵はまとめて吹き飛んだ。
先ほどまで攻撃が通じなかったのが嘘のような、見事な吹き飛びようだった。
げに恐ろしや。
敵の増援が来なくば危ういところであったな。
3人がそんなことを話している横で、君の身体が淡い光に包まれ始めた。
元の世界に戻るときが来たらしい。
それに気づいた3人が、そろって笑顔を向けてくる。
あんたのおかげで、助かったわ。
黒猫連れの魔人よ。
黒猫連れの魔人の人!
ウィズ
なにがなんだかよくわからないまま、君とウィズは光の渦に吸い込まれた。
戦いは終わり、バラキーファは取り戻された。
地獄三十六歌仙が倒れ、世に平和が戻ったのだ。
リエンたちはガンナースを駆り、揚々と平原に戻ったが--
シャティは笑顔で出迎えてはくれなかった。
シャティ
少女は平原に倒れ伏し、ひどく苦しそうな声を上げていた--
ちょっと、これどうなってんの!?
トゥーラ
メイフウ
そして今、限界が訪れてしまった……。
ルディオ
どうにかできないのか。
これがこの子の終わりなんて、あんまりだぜ。
トゥーラ
邪悪を清める聖なる霊石“ヴィーエース”……
それがあれば、この子を救える。
どこにあんの!?
トゥーラ
シャティちゃんの命を救うために!!
それ以外に方法がないのなら、そうするしかあるまいて!!
わかったわよ!
行ってやろーじゃないの!
1年後。
トゥーラ
よくぞやったね、魔轟三鉄傑!
死ぬほど大変だったけど!
トゥーラ
シャティ
トゥーラ
シャティ
シャティ
そんなこんなでシャティも元気になり、今度こそ、世に平和が訪れた……。
シャティ
おかげで本当に助かりました。
シャティ
シャティは、そそそっとルディオに寄りそい、はにかむような笑顔を浮かべた。
シャティ
シャティ
ペットは犬と猫とハムスターと文鳥と--
ルディオ
……聞いてない。
シャティ
プロポーズしてくれたじゃないですか。
“きれいな城だ”って。
ルディオ
だいたい、結婚も何も、おまえ城だろ!?
シャティ
城差別ですよー、それ!
人は堀、人は石垣、人は城……
つまり城=人なんです!
ルディオ
だいたい俺は風来坊なんだ!
結婚なんかしてたまるか!
バリスタ
このマセガキ、ウチのダーリンに色目使ってんじゃないわよ!
ルディオ
シャティ
ゆけ、我が本体ことバラキーファ!!
逃げるルディオ、追うシャティ。
魔道城塞バラキーファが、ゴゥンゴゥンと重い音を立てながらその後についていく。
トゥーラ
トゥーラ
女神としちゃ放っとけない案件だ。
こりゃ、しばらく目が離せないね。
メイフウ
誤った方向に進まぬよう、導いて差し上げるのも我らが務め。
トゥーラ
メイフウ
トゥーラ
はいこれ。
トゥーラが、ペラリと一枚の紙を手渡してくる。
『求む! 世界を揺るがす大悪党・魔轟三鉄傑を倒してくれる強いヤツ!』
な、な、なによこれ!?
トゥーラ
逆じゃないの!?
あたしたち、地獄三十六歌仙を倒したのよ!?
むしろヒーローじゃん!!
メイフウ
それを潰したあなた方は、史上最悪の極悪非道集団と目されているのです。
思うさま叫んでから、リエンは、がっくりと崩れ落ちた。
その肩を、苦笑しながらダムザが軽く叩く。
濡れ衣はいずれ晴れるもの。
地道に悪を成敗し、名を高めてゆこうではないか。
わたくしたち3人が力を合わせれば、きっとなんとかなります!!
その言葉を受けて、ひと思う。
もともとリエンは、友と呼べる者を持たず、ただ孤高に武の道を追求し続けていた。
それがいつの間にか、よくわからない縁で出会った2人とつるみ、魔轟三鉄傑などと呼ばれている。
不思議なものだが、嫌ではなかった。
そう思う自分に、少し驚きながら--
リエンは、小さく微笑んだ。
そう--この3人でなら--
ありがとう魔轟三鉄傑!
フォーエバー魔轟三鉄傑!!
第1服、ぞばっ!? ときめくあなたとGTH!
に~、イマジネイティブ☆ロックオン!
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